アコギ用ピックアップ

2.アコギ用ピックアップ:サンプル音と組合せ

2013/03/06

前回は、様々な種類のアコースティックギター用ピックアップとその特徴について触れましたが、今回は実際にサンプル音を聞きながら、理想的な組合せを考え行きたいと思います。

インブリッジ式ピエゾピックアップ(アンダーサドル型ピックアップ)
コンタクトピエゾとパラレルで接続

今発売されているエレアコのほとんどのピックアップがこれですので、サンプル音は割愛します。プリプリした音で、イコライザやプリアンプで補正したとしても、ピエゾ独特のアタック音が気になりました。一時期図のように、コンタクトピエゾとパラレルで接続して使っていたことがありますが、これだけでもかなりいい感じの音になります。弾き語りの場合、十分の音質がこのようなちょっとした工夫で得られると思います。ただ、ソロギターやインストルメンタルには向いていません。なぜなら、ギターの個性がほとんど出ないからです。3台のギターにこの図のような配線で音を出しましたが、どれも同じような音になってしまい、「そのギターの音」というより、やはり「ピエゾの音」でした。

コンタクト式ピエゾピックアップ(貼り付けピエゾ)

今までコンタクトだけでも5種類以上試しましたが、今回のサンプル音はshadowのSH2500Eを改造したものです。曲はオリジナル曲の「太陽に吹く風」のイントロ部分です。使用ギターはフォルヒD23-CRです。

コンタクトピエゾ単独の音(MP3)

いかがでしょうか。やはりピエゾ独特の高音よりの音がします。また音も全体的に薄っぺらな感じがします。しかし特筆すべきはやはりその高音のキレと、プレーン弦の音が良く表現できていることです。  最近のエレアコの傾向としては、コンタクトを複数使い、低音や高音をカバーしたものが発売されています。ヤマハのCPXシリーズやAPXシリーズのSYSTEM-57は3つのコンタクトが入っています。また、コンタクトの貼り付け方を工夫したものも数々出ています。ブレイシングの下に埋め込んだり、ピックアップ専用のブレイシングを付けたり、貼り付ける接着剤を工夫したり、形を楕円にしたり、薄く伸ばして共振の影響を少なくしたり・・・上げれば切が無いくらい、色々な付け方があります。私もヤマハ等期待して試奏したのですが、なんだかやはりピエゾでした。時代に逆行するようですが、コンタクトピエゾだけでは数や形にかかわり無く無理があると感じました。

マグネット式ピックアップ

これは、NEO-Dのシングルコイルの音です。(シングルコイルゆえにノイズが少し乗っています)。

マグネティックピックアップ単独の音(MP3) コンタクトとは対照的な音がします。低音を良く拾い、音はまろやかでメロディーラインが際立ちます。ドロップチューニングして、ギター自体のボディがあまり振動しないような低音もかなり拾います。欠点としては、倍音が少ないために、ギターの個性が出ず、物足りない感じがします。音もエレキギターみたいです。

コンデンサーマイク
con01
100円もしないコンデンサーマイクユニットに、バイアス回路を作って動作させています。それを針金、熱収縮チューブを駆使してフレキシブルなアームを作り、スポンジ等のウィンドスクリーンで覆い、ギターの中に仕込んで録音しました。

コンデンサーマイク単独の音(MP3)

安い割には、なかなか良い音がします。コンタクトが高音、マグネットが低音を良く拾うのに対し、コンデンサーマイクは低音から高音まで良く拾います。そして、何よりも特筆すべきは「エア感」です。空気の振動を拾うので当たり前ですが、ギターの音を耳で聞く感じに一番近い音がします。そして意外なことに、ピエゾやマグネットよりも出力が大きいです。プリアンプが無くても十分という感じがしました。アコギのリアルさを追求するには、コンデンサーマイクは外せないと思いました。しかし、一番自然な音であることは確かですが、音が幾分後ろにさがってしまいます。

【単独ピックアップの評価】

3種類のピックアップを聞いてみて、改めて言えるのは、どれも良いところもあり欠点もあるということです。それゆえに、究極の理想のピックアップは「それぞれの良いところだけを利用する」ことだと思えました。それでは次に2種類のピックアップを組み合わせた音をお聞きください。

二つ組み合わせたときの音

マグ部分はシングルコイルを使っています。マグにコンデンサーによる臨場感とエア感と高音が加わり、コンデンサーマイクだけよりも音が太く、重厚になります。Fishman Rare Earth Blendに非常に近いものがあると思います。

コンデンサー+コンタクトピエゾ(MP3)

コンデンサーマイクに、高音の歯切れよさと抜けのよさが加わります。コンデンサーマイクだけでも十分ですが、さらに高音が加わることによって、こもった感じが取れ、すっきりした音になります。しかし、少々高音よりの音です。

コンタクトピエゾ+マグネット(MP3)

マグ部分はハムバッキングを使っています。マグネットの低音と、コンタクトの高音がうまく補い合い、バランスの良い音がします。しかし、プレーン弦が少しだけエレキっぽいです。組み合わせが一緒なので、新岡ギター教室のニコピンの音に似ていると思います。押尾コータローさんや、マイケル・ヘッジスの曲を弾くには幾分アコースティックとは違いますが、この組み合わせが良いかもしれません。実際にソロギタリストでピックアップを使う方は、メーカーは違いますが、この組み合わせが多いです。 単独のピックアップよりも2種類のピックアップを組み合わせたほうが、音質面、周波数特性の面で向上することを確認できました。二つの組み合わせの中で、ベストなのはこの実験をした限りでは、マグネット+コンデンサーマイクが良いのではないでしょうか。同様の組み合わせのRare Earth Blendは少し高価ですが、このようにNEO-Dと安いコンデンサーマイクユニットで同程度の音質を得ることができますので、お勧めです。コンデンサーのバイアス回路は、自作のプリアンプの中に組み込みましたので、次回の「プリアンプ編」で公開したいと思います。 これ以外にも、コンタクト+コンタクトを試しましたが、貼り付け位置を色々変えても、高音部のさわさわしたコーラスがかった音が気になりました。昨今ではコンタクトは複数使う傾向があるようですが、あえて私の場合は「コンタクトは1つのほうが良い」と思えるようになりました。 それでは、3つすべてブレンドするとどうなるか。

3つのピックアップをすべてブレンド!!

コンデンサー+コンタクトピエゾ+マグネット(MP3)

ダイナミックレンジ、臨場感、エア感、説得力、・・・・かなり理想のピックアップに近づいたと思います。それぞれのピックアップの良いところが現れ、欠点の非常に少ない音といえるでしょう。  今のところ理想のピックアップは3つのピックアップすべてをバランスよく組み合わせたものと言えます。これ以外にも、複数組み合わせを思いつく限り色々試しましたが、高音部の位相がずれ、特定の周波数帯域が減衰もしくは干渉してしまうことが多いので、今のところこの3つが限界であると同時にベストといえます。  試行錯誤を繰り返してきましたが、結論をまとめると次のようになります。

マグネット 弦の音を拾い、主に低音(基音)を担当する。
コンタクトピエゾ トップの木の音を拾い、主に高音(倍音)を担当する。
コンデンサーマイク 空気の音を拾い、臨場感、エア感を増し加え耳障りの良い音にする。

こうした「音」に関する判断は、個人的な好みや、商業戦略的な流行や味付けされた音を好む人など、非常に判断が難しい分野であることを伝えておきたいと思います。機材で測定した周波数特性やダイナミックレンジなどでは計れない、耳による判断が最終的に求められる分野ではないでしょうか。かつて、PA用4連スピーカーでエーシングが進んだボロボロのものが、非常に良い音で響いているのを経験したことがあります。しかし、同じ会場で、最新の高性能スピーカーに変えたときに、音はクリアで、高音、低音等申し分ない音なのですが、立体感、奥行きという点では物足りなさを感じたことがありました。機材のカタログ性能は最新のものが絶対的に良いのですが、そうした数値には表れない何かが実際に聞こえてくる音にはあるように思われます。もしかすると、スピーカーを鳴らしたときに、電気信号に含まれる周波数成分だけでなく、空気の粗密波に変えられる時点で耳に聞こえないような高い周波数帯が付加され、音に広がりや奥行きを与えるのではないかと想像しています。 最後に、ミキサーでリバーブをかけた音をお聞きください。 コンデンサー+コンタクトピエゾ+マグネット(MP3)

ハウリングの問題

理想の アコースティックサウンドに近づけば近づくほど、大きな問題が出てきます。それはハウリングです。録音するだけならハウリングは問題ありませんが、ライブでは大きな問題です。次回はハウリングを自作プリアンプの独自の回路で回避することに成功しましたので、その回路図を公開しながら、アコースティックサウンドの敵、ハウリングと戦います。

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