アコギ用ピックアップ

3.ハウリング対策とプリアンプ

2013/03/15

前回は、ピックアップの組み合わせでベストなものをサンプル音を聞きながら考察しました。結論として今のところは3種類のピックアップ、コンデンサーマイク+コンタクトピエゾ+マグネットをバランスよくブレンドすることが良いとの結論に至りました。同時に大きな課題が残されました。理想のアコースティックサウンドに近づけば近づくほど、ハウリングの問題があるということです。  それで、今回は「なぜハウリングが起こるのか」、「回避するためにどんな方法があるのか」。「根本的にハウリングを起こりにくくする方法は無いのか」。それらを論理的に考えるとともに、プリアンプ回路によってハウリングを防ぐ画期的な方法について考察します。

ハウリングとは何か

ハウリングそもそも、ハウリングとは何でしょうか。それは、入力と出力の間に生じる音のループです。マイクで増幅する場合を図で表すと次のようになります。

右記の図を見るとわかるように、、アンプで増幅された音の一部がもう一度、マイクから入り増幅され、再びスピーカーから出てそれを繰り返します。多くの場合ハウリングは特定の周波数帯で生じます。高音部なら「ピー」とか低音部なら「ブー」というような音が出ます。アコギの場合もピックアップを付ければ、これと同様の現象が起こります。
以上が一般的なハウリングですが、厳密に言うと、必ずしも「発信」が起こるわけではありません。出力のスピーカーの音の一部が、マイクやピックアップに過度に混入すると「ハウリングぎみ」になり、音が不明瞭になるとともに、不快な残響音が含まれることになります。これが結構曲者です。 発信した音は誰にでもわかり、「音量を下げる」、「イコライザーでその周波数をカットする」、「ノッチフィルターをかける」など比較的に容易に対応することができますが、発信しない所謂「ハウリングぎみ」の音は、気づかない人もいるくらい、繊細な調整が求められる分野です。

なぜハウリングが起こるのか。

結論から言うと、音を電気的に増幅するからです。すべて肉声や生音で音楽を楽しんでいた古きよき時代?はハウリングはありませんでした。今でもクラシックのコンサートでは生音を大切にして、電気的な増幅を行わないのが普通です。  歴史を振り返ると、声楽や楽器そのものが、電気とは無関係に発展してきました。いくつか例を挙げてみます。

声楽:声帯の振動を口腔や鼻腔で共鳴させ増幅させ声を透るようにする。

管楽器:特定の単振動を楽器内に起こさせ、この共鳴を利用して音を増幅する。

弦楽器:弦の振動を木や胴体を利用して共振共鳴を起こし、音を増幅する。 アコースティックギターも「弦楽器」であり、例外ではありません。大きな音を出すためにボディを大きくしたドレッドノート型のギターが開発されました。低音から高音までムラなく出すためにも、この共鳴の利用は欠くことができません。楽器の特徴そのものがこの共鳴・共振にあると言っても過言ではありません。
それでは、ピックアップなど使わずに、生音だけで演奏すれば良いではないかと言う方もいることでしょう。しかし、その「古い考え方」だけでは楽器の可能性や発展性がなくなってしまう可能性があります。 私も生音だけでコンサートをやったことがありますが、音量を稼ごうとあせるがあまり、余分な力が入りうまく演奏できなかったりしました。  クラシックギターの演奏会も何度か行きましたが、指がとても早く動いて、超絶テクニックの持ち主は多いのですが、会場が少し大きくなると、音が小さいか聞こえないことも多く、あまり感動的な音ではありませんでした。  「音は聞こえなければ意味が無い」「音に集中するためにある程度の音量は必要」と常々思います。ギターのように繊細な楽器は、演奏に精神を集中して、ピアニッシモからフォルティシモまで十分表現できるようにする必要があります。そのためには、電気的な増幅もその方法の一つであり、今後のアコースティックギターの表現の幅を広げる必要不可欠な方法に思えます。  もともとギターは共鳴を利用して音を大きくした楽器ですから、そこにあえてピックアップを付けて音を拾い、アンプで増幅するので、楽器の中ではきわめてハウリングの起こりやすい性質をもっています。  ハウリングがなぜ起きるかについて、アコギの場合に限るなら、ボディーの共鳴や共振によって引き起こされるというのがその結論です。エレキギターは、この共鳴や共振がほとんど無いので、ハウリングの問題はまずありません。

ハウリングを防ぐ方法

前述と重複する部分もありますが、ハウリングを防ぐ方法はいくつかあります。

ハウリング時の周波数特性
 電気的な方法

ハウリングを起こしたときの周波数成分を見ると右記の図のように特定の周波数帯がピークとなり、どの周波数かは一目瞭然です。 この周波数帯を下げてしまえばハウリングを防ぐことができます。  具体的には以下の方法が考えられます。

  • イコライザーによる方法。    グラフィックイコライザーによってハウリング周波数部分を下げれば、防げます。    欠点:グラフィックイコライザーと言えども、ピンポイントで周波数を下げることはできません。よってハウリング部分だけでなく、大幅に前後の周波数帯も下げてしまう恐れがあります。それにより音響機器のフラット特性が失われてしまう可能性があります。
  • ノッチフィルタによる方法。    イコライザーは手動でコントロールしますが、フィードバック検知システムにより自動的に周波数成分を割り出し、イコライザーと同様にその周波数対を下げることにより対応します。    欠点:イコライザーによる方法と同様の欠点があります。また、実際にハウリングが起きてからでないと対応できません。ハウリングのピークが複数存在する場合、対応できない場合があります。

こうした、電気的な方法はいずれの場合も、音質がある程度変化してしまいます。もともとその楽器を特徴付ける一番響く周波数帯をあえて下げてしまう不自然さも見逃せません。

物理的な方法

物理的な方法は、以下の方法が考えられます。

  • スピーカーからできるだけ離す。    離れれば音は減衰して、ハウリングが起こりにくくなります。
  • 指向性を利用する。    マイクの場合、単一指向性等のより指向性の鋭いものを使うことにより、スピーカーからの音の回り込みを防ぎます。    アコギの場合は、トップの角度等によりある程度の指向性を変えることができます。
  • 音源を隔絶する。    楽器を別の部屋にするとか、仕切り板を設ける等により、音の入り口と出口を隔絶してしまえば、ハウリングを防ぐことができます。また、完全に隔絶できないまでも、譜面台等の位置によりハウリングを防ぐことができる場合もあります。
    物理的な方法は周波数特性の変化が少ないので、これらの方法で対応できるなら電気的な方法より勝っていると言えるでしょう。    あえて無理難題を自分に課するなら、物理的な方法を電気的に行うことができれば、音質面でも効果的です。

プリアンプを使って、ハウリングをある程度防ぐ!

プリアンプ

実験的に下記のようなプリアンプを作成してみた。この回路で、マグネットとコンタクトを付けてギターかフォーンジャックを通して繋いでみました。  基本的にギターからの2つの信号をそれぞれVRでレベル調整をし、オペアンプで増幅し、それをコンデンサを介してミックスしています。通常であるならミキシング(加算回路)を付けるべきですが、今回は実験ですのでそのまま直結しました。オペアンプの内部抵抗はきわめて大きいらしく、これだけでも十分実用になります。

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問題のハウリングですが、不完全ながら幾分ハウリングには強くなるようです。出力の小さいピックアップをできるだけ早くゲインを上げる方が、ハウリングには強くなります。しかし、この回路だけでは、十分な効果は期待できません。  ところで、交通量が多い場所で、マイクを通して実況放送など、人間のアナウンサーの声を綺麗に録りたい場合、昔からある方法として次のようなものがあります。  下図のようにマイクを二つ互い違いに持ち、プラスマイナスを逆転させて、パラレル接続します。すると車などの遠方から来るノイズは、マイクAとマイクBに同程度入り、互いに逆相となるため打ち消しあって出力にほとんど現れなくななります。マイクしかし、実況する人間の声はマイクAだけに主に入り、Bにほとんど入りません。よって、声は出力にそのまま出るようになります。  これは、マイクを2つ使って初めて可能になる方法です。ギターの場合、外部からの音を良く拾う、コンデンサーマイクとコンタクトピエゾによってこれと同様のことができないかを考えました。また、ハウリングが前考察どおり、二つのキーワード「電気的に増幅する」、「共振する」とい要因によって引き起こされるのであれば、このマイクによる物理的な逆相を電気的に作り出してやれば、同様に外来ノイズやハウリング対策になると考え、回路図を考え出しました。次にその回路と動作原理を説明します。

プリアンプを使って、ハウリングを根本的に防ぐ!

いつものように手持ちの部品で作ったので、抵抗、コンデンサ等、論理値より外れているものがかなりありますが、一応これで動作しています。高価なオペアンプも手元にあったのですが、なぜか汎用のほうが音質が良好だったので最終的にこうなりました。

(誠に勝手ながら製品版発表に伴い回路図の公開は終了しました)

ギターに内蔵されているのは、マグネット、コンタクト、コンデンサーマイクの3つです。ステレオのフォーンジャックは2出力しか出せないので、暫定的に以下のようにしています。

オーディオミックス

ピエゾコンタクトピックアップの出力は、基本的にキャパシティ出力なので、マグネットのインダクタンス出力を電解コンデンサを介してピエゾと加算しています。 このフォン出力を上記、プリアンプの入力に繋いで必要な利得を得るとともに、ハウリング対策を行いました。

■回路図の説明
「コンデンサーマイク・バイアス回路」

まず、コンデンサーマイクにはバイアス回路が必要ですので、2.2KΩの抵抗を通して電圧を供給しています。それとともに交流成分だけ電解コンデンサ10μFを介して取り出しています。

「反転増幅回路」

要となる部分です。ピエゾとマグネットの混合された信号がオペアンプに入り、増幅するとともに反転された信号が出力されます。コンデンサーマイクの出力が同相なのに対し、ピエゾの信号は逆転することに注目してください。

「バーチャルショートによる反転増幅回路」

コンデンサーマイクからの出力と、マグネットとピエゾの反転された出力がそれぞれVRで調整され、入ります。この時、抵抗の比率により、コンデンサマイクの信号は、そのまま反転され、ピエゾからの信号はさらに10倍程度増幅され加算されて、モノラル出力として取り出します。 ここで思い出していただきたいのは、前回書いたようにそれぞれのピックアップの役割です。

マグネット 弦の音を拾い、主に低音(基音)を担当する。
コンタクトピエゾ トップの木の音を拾い、主に高音(倍音)を担当する。
コンデンサーマイク 空気の音を拾い、臨場感、エア感を増し加え耳障りの良い音にする。

オペアンプ配線の写真このプリアンプを通しても、見事にそれぞれの役割を演じてくれます。しかし注目すべきはコンタクトとコンデンサーマイクの関係です。 コンデンサーマイクの信号は最初のオペアンプには入らず、2個目のバーチャルショート反転回路を通して結果的に反転します。コンタクトは、最初のオペアンプで反転し、さらに2段目のオペアンプで反転しますから、結果的に入力と同相となります。つまり、加算される前は、コンタクトとコンデンサは逆相になっているということです。エア感を拾い、トップの音を拾うという点で、それぞれ理想的な音をギターから拾ってくれると同時に、ハウリングになるような遠くから入り込む音の信号は、コンデンサーマイクにも、ピエゾにも同程度入り、打ち消しあって、ハウリングが起こりにくくなります! 実際に同相だけでできたプリアンプですと、スピーカーの前でギターを弾くと、いとも簡単にハウリングしてしまいました。しかし、この回路を通してギターをスピーカの前で弾いて、100Wあるパワーアンプをゆっくりフルテンまで上げてみましたが、ハウリングは起きませんでした。その状態で弦を爪弾くと、驚くべき音量でスピーカーから音が飛び出してくるではありませんか。※ 現段階での実験は大成功でした。実際にはコンデンサだけでも位相はずれるのですが、今回は無視します。(笑) ※その後の実験で、コンデンサーマイクの位置と、コンタクトの位置関係で逆にハウリングがおきやすくなるポイントもあることがわかりました。うまく逆相にもってゆくことは非常に難しい作業となりますので、この点が今後の課題となってゆくと思います。

プリアンプを3チャンネルにする

今回の実験は予想以上の成果だったと思います。今は、スピーカーから音を出すときはこの回路を使い、レコーディング等、音を出す必要が無いものは、右写真のような自作プリアンプを使っています。

しかし、飽くなき探求は続きます。まず、このままフォンジャックを使った出力では2チャンネルしかコントロールできません。また、プリアンプはできるだけ初期の段階で増幅するほうが望ましいです。高いシールドケーブルを使って、伝導率を躍起になって上げるよりも、十分利得を稼ぐことができれば、安いケーブルでも十分いけるはずです。  それで、次回は次の点を改良します。

  • できるだけ初期段階で増幅し、利得を十分取り、安価なケーブルでも良好な音質を得られるようにする。 この点に関しては、ギターに内蔵するか、ギターからの出力直後に取り付けるか検討中です。いずれにしても、できるだけ早い段階でゲインを稼ぐようにします。image2
  • 3つのピックアップの割合を自由にコントロールできるようにする。   上記回路のままですと、マグネットとピエゾが連動してコントロールされてしまいますから、独立させます。これもギター内部か、できるだけ出力直後にコントロールするようにしたいと思います。基板やボリュームの取り付け位置によって、ギター本来の鳴りを損なわないようにしたいです。
  • ファンタムにすると、不平衡>平衡変換回路(所謂DIというはつですね)がややこしくなりそうなので、最初は無難に006Pで電源供給します。

まだ部品も揃っていないので、少し先になりますが、結果をまた報告したいと思います。

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